「実は最初からわかっていたんだ」
あの時、僕が母に言った言葉。

昨晩布団の中で思い出した。
医師に宣告をされ母に告知する迄の言葉を。

「エイズ」という言葉。
母はエイズ発症をわかっているのだろうか?
知っていて、あえて口にしないのだろうか?
一体どちらなのだろうか?

この疑問は生涯疑問のままだろう。
悲しみを僕に見せまいと平常を保とうとする
母のあのこわばった表情を見てしまうから。



初日に医師に宣告をされ入院した。
それから何度も医師と対面し話をした。

話の中で「エイズ」の単語が
聞こえた気がした。
聞こえたか聞こえてないか
自問自答するうちに
自分がエイズ発症かどうかの疑問に至った。

「どの状態がエイズ発症なんですか?
今の状態がそうなんですか?」

医師に僕は問いかけた。
問いを受けた医師に
エイズ発症の現状
発症の認定疾患
ニューモシスチス肺炎の内容
を説明して頂いた。

そこから時間をかけ
言葉を一つ一つ積み上げて
僕は母に告知した。



今過去を考えると
医師はあえて僕に「エイズ」という言葉を
かけなかったのだろう。
僕もまた母に「エイズ」という言葉を
かけなかった。

最近になってようやく
僕はHIVとエイズを
頭ではなく体で理解しつつある。

HIVとエイズは違う。

患者の容態も違えば
回復の経過も異なる。
また患者の置かれる状況も違う。

加えて言葉の重みも違うのだ。

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